落合信彦『ケネディからの伝言』小学館、1993年2月

ケネディからの伝言

ケネディからの伝言

■内容
アメリカ合衆国第三五代大統領J.F.ケネディが、大統領選におけるディベート戦略、そして大統領となってから取り組んだ人種差別問題、ベルリン危機などソ連との緊張関係やベトナム戦争などへの対峙姿勢をそれぞれのエピソードから読みとき、リーダーシップのあるべき姿を語る。

■読後感
この本では、歴史や哲学をふまえ、決断し、そして語る力の重要性、そして強いリーダーシップがあれば国民を動かすことができることが説かれている。カリスマ性、強い思い、知性といった要素が伴えば、一人の人間の考え、言説がこの大きなアメリカという社会を動かしてきた。

本筋の主張とは関係がないが、ケネディの西ベルリン演説の件を読みながら、西ドイツと日本が立ち上がった戦後を思い浮かべていた。これを経済成長論で読み解くと少しく真面目で味気ないものとなってしまうが、戦前の繁栄について意識のあった人々が改めてこれを作り直したのだと考えるのがまっとうではないか。人は頭に描いたもので、かつ一般の合意を得たものを形にするのにはさほど抵抗なくできるのだ。