鈴木大介『最貧困女子』幻冬舎新書、2014年9月
- 作者: 鈴木大介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/09/27
- メディア: 新書
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◇少女たちを貧困に導く「三つの無縁」と「三つの障害」
◇貧困と貧乏の違い−湯浅誠さんの言葉から−
◇彼女たちにとってはそもそも「手続き」が難しい
- まず彼女はメンタルの問題以前に、いわゆる手続き事の一切を極端に苦手としていた。文字の読み書きができないわけではないが、行政の手続き上で出てくる言葉の意味がそもそも分からないし、説明しても理解ができない。劣悪な環境に育って教育を受けられなかったことに加え、彼女自身が「硬い文章」を数行読むだけで一杯一杯になってしまうようなのだ。(67ページ)
◇家出少女たちの生い立ちに共通すること
- 僕の勝手に作ったキーワードに「おにぎりとコスメ」がある。これは、取材をした家出少女ら(少年も同様)の多くが、過去の小学生時代などに、万引きの経験があったり常習犯の犯の過去をもっていて、その盗んだ商品がおにぎり−食品と、コスメ−化粧用品だったことから考え付いた。(86ページ)
◇セックスワークと彼女たち
- 少女らの中には、過大なストレスから急性の胃潰瘍となったのか、公衆便所で吐血したという者もいた。過換気症候群の発作を起こして倒れたというケースは結構頻繁に聞く。家出少女を集めた「全寮制」の援デリの取材をした際には、路上生活から寮生活に入った少女らに、同時に生理が来たというエピソードもあった。どの少女も家出生活中は月経が止まってしまっτいたが、多少は安心できる寮に人った瞬間に、一気に生理が来てしまったというのだ。彼女らの置かれた状況は、いわば「戦乱の中を逃げ延びる子供」に近しいどれほど巨大なストレスの中に少女が生きているのかが分かるエピソードだった。(99ページ)
- 路上に彷徨い、現金収入のあてもない家出少女らの側からすれば、彼らセックスワークの周辺者は、いわば「路上のセーフティネット」だった。ここで忘れてはならないのは、本来の住所から飛び出してきて、もしかしたら保護者から捜索願を出されている可能性もある少女にとって、自力で賃貸住宅を契約したり、自分名義の携帯電話を入手したり、履歴書に住所を書かなければならない」一般的なアルバイトをすることは、ほぼ不可能だということだ。(104〜105ページ)
- この当事者と支援者の断絶を取り除くためにも、段階的なセックスワークの社会化を望みたい。制度的な変革が無理だとすれば、せめてセックスワークの経営サイドの意識改革を促すような動きと、従米の女性支援勢力が、きちんと手を結んで同じテーブル上で話してほしいと思うのだ。(196ページ)
◇諸縁を失った彼女たちの姿
- 彼女らには、まず三つの縁がない。子供時代から劣恵な環境で育ってきた中で、家族の縁を失い、制度の縁には斥力を育たせ、地域の縁も断ち切ってきた。路上に出てセックスワークに捕捉され・・。だがここでひとつ疑問が湧かないだろうか?なぜ彼女らは「地域の縁」「地元にあったかもしれない同世代のコミュニティ」も失ってしまったのか。実はここに、彼久たち自身が抱える大きな問題があった。あえて糾弾されることを覚悟で書きたい。知的障害をもつ女性の売春ワークについては前述した通りだが、彼友ら売春の中に埋没し続ける家出少女らもまた、そのほとんどが「そつの障害」=精神障害・発達障害・知的障害の当事者か、それを濃厚に感じさせるボーダーライン上にあった。障害という言葉がよろしくないなら、こう言い換えよう。彼女らは本当に、救いようがないほどに、面倒くさくて可愛らしくないのだ。(132〜133ページ)
さまざまな障害を抱えてセックスワークに陥らざるを得ない「最貧困女子」の状況を克明につづり、その対策として段階的なセックスワークの社会化を提言している。