橋本治『負けない力』大和書房、2015年7月
- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2015/07/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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◇夏目漱石が考えた「教養を身につけた人間」の愚かさ
◇他人の考え方は「覚える」のではなく「学ぶ」
- 「他人の考え方」というのは、覚えるものではなくて、学ぶものです。「そういう考え方もあるんだ」と思って参考にして、自分の硬直してしまった「それまでの考え方」を修正して、自分の「考える範囲」を広げるためにあるのが「他人の考え方を学ぶ」で、つまりは、自分を成長させることなのです。「他人の考え方を覚える」だけだと、その成長に必要な変化が起こりません。前に私は「知識を身につけるのではなく、知識が身に沁みることが必要だ」と言いましたが、教養主義というのは、身に沁みなければなんの意味もない「他人の考え方」でさえも、「覚えていればなんとかなる知識の一種」として処理してしまうのです(110ページ)
◇教養からは正解は生まれない、正解は自分で考え出すもの
◇問題を「発見」することがとても大切なこと
- 重要なのは「問題」を発見することで、「答」を発見することではありません。「ここに問題がある」ということが発見出来れば、遅かれ早かれ、その問題を解くということは起こります。「問題を発見する」ということが重要なのは、その発見した「問題」が、自分にとって意味のある問題だからです。人生相談というのは、自分の抱えている「問題」を他人に相談してなんとかしてもらうことですが、どうしてこれに答える人聞は、自分とは関係ない「他人の悩み」なんかに答えることが出来るのでしょう?別にそうむずかしいことではありません。悩みを訴える人は、自分で「自分の問題」をまとめてしまっているからです。(198ページ)
◇あなた自身が問題をよく検討すること
- 問題を「問題」として捉えて、「なんかへんなところはないかな?」と考えることです。試験問題とは違って、あなたが現実に立ち向かう問題には「模範回答」などというものはないのです。問題に対する解答を出す人があるとしたら、それはあなただけです。現実の問題に「答の出し方」などはありません。問題に対して格闘するのはあなた一人で、だとしたらあなたのすることは、「この問題はどうなってるんだ?」と、まず問題を検討することです。敵をよく知らなければ、敵を倒せません。ためつすがめつしてなんかへんだな?」と思ったら、そこが解答につながる細い通路です。(245ページ)
これまでの教養の総体は計り知れないほど大きい。これを学ぶことも意味がある。しかし、それ自体が目的化してしまうと大変滑稽なことになる。一人ひとりが自分の問題をとらえ、これを解決するために考える過程こそが大切であり、教養はその一手段にすぎない。とりわけ最近は不確定な時代に足を踏み入れており、キャッチアップ目標もすでにない。この状態においては、解決策を探るより、まず自分なりの視点から問題をとらえることが大切である。