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若松義人『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』PHP新書、2007年3月

 

トヨタの上司は現場で何を伝えているのか (PHP新書)

トヨタの上司は現場で何を伝えているのか (PHP新書)

 

 

■内容【個人的評価:★★★--】

◇ 自分の得意なことだけやっていると・・・
  • 「がむしゃらにやるだけでは、自分の会社をつくっても、結局は『雇われる存在』になる。経営センスでなく、現場センスだけでモノをつくり、『満足だ』と喜んでも、取引先の都合に合わなければ売れず、売れなければお金は入らない。 一方、材料代や社員の給料は支払いを待ってくれない。そんなことを続けていたら、奥さんや子供に、つくった鉄板をしゃぶらせることになる。 今は会社から給料をもらっているからピンとこないだろう。だから、『もしこの現場が自分の経営する会社なら』といつも考えることだ。経営者になれ。そうすれば、今の仕事のやり方が変わる。仮に将来独立しても困らないようになる。(36ページ)
◇ 膨大な資料、それは本当に必要なのか
  • 仕事にはたくさんのムダが含まれている。「誰も読まない資料をつくる」「使途がわからな いデータをとる」といったムダをしてはいないだろうか。今やっている資料作成は本当に必要なのだろうか。「シリョー」は「資料」でなければならない。「紙量」や「死量」では、時間と労力がムダだ。「必要な資料」という思い込みを変えてみないか。(62ページ)
◇ いい失敗のルール
  • ただし、恐れずに失敗するためには、いくつかのルールがある。
    ①失敗したら自分で直す
    失敗の尻ぬぐいを人に押しつけるようでは、失敗を財産にすることはできない。また、誰も助けてくれなくなる。
    ②同じ失敗は二度しない
    何度も同じ失敗を繰り返すのは、単なる無能である。
    ③失敗を記録しておく
    失敗を貴重な財産として受け継いでいくために、小さなミスであっても、理由と対策を書類に記録しておく。(70-71ページ)
◇「できない人」の能力を引き出す
  • 一般に、会社や上司は「できる人」「使いやすい人」を重宝し、「できない人」「使いづらい人」をうとんじる傾向がある。だが、はたしてそれでいいのだろうか。トヨタ式人づくりの根底にあるのは「選ぶより育てる」だ。 「できる人」「そうでない人」をあらかじめ区別しない。あらゆる人財の能力を引き出そうとする。そこには「人間の知恵はすごい」「人間の能力は無限だ」という人間性尊重の考えがあり、すべての人の考える力を大切にすることで、人の能力を引き出していこうという姿勢がある。(141ページ)
◇ 真因追求の姿勢
  • トヨタを代表する言葉に、次の短い一言がある。 「『なぜ』を五回繰り返せ」 問題の表面的な「原因」に対処するのでなく、その背後にある「真因」がわかるまで徹底して問いかける姿勢を表している。(154ページ)
◇ 問題は現場にある
  • 「積み下ろしには何分ぐらいかかるのか」 と聞いた。息子は知らなかったので、確認もしないままに「一五分ぐらいです」 と適当に答えた。そして先へ進もうとしたが、大野氏はその場を動こうとしなかった。 一五分たった頃、そばにいた息子をこう叱りつけた。「それ見ろ、とても一五分で作業は終わらないじゃないか。こんな大きなトラックで作業を するから時間がかかるんだ。もっと小さなトラックに替えなさい。大変なムダだ」 あとで調べると、積み下ろしには二時間以上かかることがわかった。息子は、適当な答えをしてしまった自分の不明を恥じるとともに、少しでも納得のいかないことがあると、 現場でじっと立って見続ける大野氏の現場主義に深く感銘を受けたという。(160ページ)
◇ 今日のことは今日片付けろ
  • トヨタ式は問題の先送りを許さない。たとえば、朝、問題点がわかれば、そのままにせず、 夕方までに改善する。夕方、問題点がわかれば、翌朝までに改善する。なにがなんでもその 日のうちに改善するのは大変に厳しい。だが、もっとも早いやり方でもある。 管理職であるあなたが工場で問題に出くわしたとする。どうするだろうか。担当者を呼んで、すぐに直すように指示するだろう。だが、たとえば担当者が出張で不在だったらどうだ ろう。「帰ってきたらすぐ直すように」で終わりになるのではないだろうか。 ところが、大野耐一氏にかかると、担当者の出張などなんの言いわけにもならなかった。(164ページ)
◇ 難しいことはやさしく、楽に
  • 難しいことを調整しながらやるのではない。難しいことはやさしく、複雑なことは簡単にして、誰でもできるようにする。「ラクだ」が「効率的だ」である。(178ページ)
◇ 少しでも変わること、前進すること
  • 昨日と同じ今日に安住するのではなく、ほんの少しでも変わること、前進することを心がける。一歩一歩はわずかでも、毎日進み続けることで、はるかな目標に到達できる。大切なのは続けることなのだ。(185ページ)

■読後感

トヨタ式の推進役であった大野耐一氏のエピソードを多く引用しながら、トヨタで行われていた改善がいかなるものだったのか、心構えや手法を紹介している。

内容としては日本的経営の基本であり当たり前のことなのかもしれないが、実際にこれを行うのは自分自身の強さや組織風土などいろいろな問題もあるだろう。正直なところ非常に耳に痛いところも多かった。

しかし、「自身が経営者」としての視点を持ち、事業推進のために取り組んでいく、というところは、いかなる組織においても重要な視点であると思われた。