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J.K.ガルブレイス『満足の文化』新潮文庫、1998年5月

満足の文化 (新潮文庫)

満足の文化 (新潮文庫)

■内容【個人的評価:★★★★−】

  • 満足せる人々は今や多数派となった。そしてこの特権層は自らの特権を侵略しようとするものには精力的に対抗する。
  • この満足社会は、少数の厳しい労働を行う人々によって支えられている。これは外国人労働者であることも多い。
  • 金融業界は、中央銀行の積極的な政策に満足している。満足の文化においては、つまるところ、失業よりもインフレの方が恐ろしいのである。このため金融業界はインフレの防止を重視し、インフレ率を超える利子率を支持する。そして高金利は満足せる人々の多くに収入をもたらす。
  • 満足せる人々に奉仕するためには、まず政府介入をできるだけ行わない教義が必要であり、これはリカードマルサス、スペンサーなどである。次いで、限りなく富を追求することについての正当性である。さらに貧しい人々に対する責任感を弱めることである。
  • そうした人々にスミスが支持されるが、本来スミスは優れたプラグマティストであり、国家の必要性と有益な役割を認めていた。スミスは国家が貿易に関与することについては反対し、利己心による自由貿易が必要と考えていたが、一方で株式会社に対して懐疑的であった。
  • 1980年代の大々的な投機活動の陰鬱な顛末は当事者以外の人間にとっても極めて明瞭である。このような事態は、時宜を得た責任ある規制活動があれば避けられたはずである。
  • 社会的援助に頼らざるを得ない下層階級の悲惨な現状は、最も重大な社会問題である。大都市の生活環境改善は、公的な活動によってのみ可能である。良い学校、福祉、職業訓練、貧困者住宅、健康管理、レジャー施設、図書館、警察は欠かせない。
  • 仕事は、紋切り型の定義からすれば、楽しくかつ報酬を伴うものである。しかし、実際には、繰り返し作業だけで退屈な、苦痛や疲れを伴う、精神的刺激もなく社会的品位のない仕事が多い。こうしたことは、さまざまな消費者サービス、家事サービス、農産業の収穫作業に当てはまる。
  • アメリカの諸都市では、下層階級の社会的無秩序が問題となっているが、これは大都市の工業が移転したことによる失業の問題が密接に関係している。また下層階級のより上の階級への流動性も低くなっている。
  • 経営者たちは、所有者や株主たちより多くの実権を握っている。しかし、それが昂じてしだいに自分の報酬を最大化させることとなった。
  • 組織の上層部では、問題に取り組むのでなく委任する、より厳密にいえば押し付けることが要求される。面倒なことを実行するのは他人である。
  • 景気後退時、政府の財政政策と金融政策が期待されるが、とりわけ満足せる人々が期待するのは金融政策である。インフレと失業ということでいえば、満足の文化においてはインフレの方がより恐れられている。
  • 満足せる人々に奉仕するためには必要な条件が三つあり、一つは政府介入の制限、二つは限りなく富を所有することの正当性を見いだすこと、三つは貧しい人々への責任感を弱めることである。
  • 満足せる人々の経済学の代表者としてはアダム・スミスがあげられるが、スミスは実際は優れたプラグマティストであり、国家の必要性と役割を認めていた。