ヴィルフリート・ハイト編『エコロジー・ヒューマニズム』人智学出版社、1984年5月
エコロジー・ヒューマニズム―成長妄想からの決別-地球略奪への対案としての第三の道 (1984年)
- 作者: 石井良,ギュンター・バルチュ
- 出版社/メーカー: 人智学出版社
- 発売日: 1984/05
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- 今までは、与えるよりも奪うことを目的とする「搾取の文化」であった。これからは、享受の文化へ方向を変えることが必要である。
- すべての困窮の原因は20世紀に支配的となった社会秩序における二つの構造的要因に求められる。それは貨幣と国家である。貨幣ないし国家を手中にしている者が権力を持つ。
- 緑の党は、従来の政党の対案である。緑の党が実現を目指す社会は自然の連関に即した生活条件、個人的かつ社会的存在としての人間を基本とした社会的発展を目指す社会である。
- 現在支配的な経済、貨幣、国家=政治、文化の各過程の根本的な修正が必要である。
- 重要な諸目標は以下のとおり。
- 1.環境・自然・健康の保護:生命の破壊→生命の維持
- 2.エネルギー:原子なき電流
- 3.原材料:浪費→責任ある利用
- 4.経済:利潤のため→消費者のため
- 5.労働:市場価値→基本的権利義務
- 6.労働時間:可能な限りの労働→必要なだけの労働
- 7.労働現場の人間化:対極化→民主化
- 8.所得:生活の不安→生活の安定
- 9.世界経済:競合→連帯
- 10.社会の脱国家化:官僚支配→自主管理
- 11.脱軍備化:軍備補充→軍備廃棄
- 12.自律性:他者による決定→自己責任
今後の社会がとりわけ環境面における規制を強化しなければならないことは明瞭である。しかし、この書では、個々人に必要なものがあたかも計量可能であるかのような視点に立っている。それは経済に計画性を持ち込むことであり、共産主義と立場が変わらないように見える。
貨幣について、消費における使用と生産における使用を分けるべきであると説かれているが、生産にも使えてしまったらそれは歯止めができるものではないだろう。
ドイツ緑の党における主張が中心にある。この主張は、エコロジーを中心に体制そのものを組み換える提言である。提言を仔細に見ると、社会主義のサイドに立脚しつつ、連帯などの概念を取り入れたものであり、よりラディカルには、国家や貨幣などもその意味を根本から見直そうとするものである。失業はないが、効率性は二の次とする社会、まさにユートピア的であり、この書も、政党の演説が文章になったようなきらいがある。個別の具体的政策を見たいところである。