K.ポランニー『人間の経済2(交易・貨幣および市場の出現)』岩波現代選書、1980年7月
人間の経済 2 交易・貨幣および市場の出現 (岩波現代選書)
- 作者: カール・ポランニー,玉野井芳郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1980/07
- メディア: 単行本
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◇市場及び全体計画はギリシアに生まれた
◇ヘシオドスの見たギリシアにおける経済活動
- 『仕事と日々』は互酬性を隣人関係の上に築こうとしているが、それもうまくいっていない。「隣人から桝目の量を正しくはかつてもらうこと、そして正しくお返しをすることだ。同じ量目でもって、またできるなら多い目に。先々、困ったおりにおまえがその隣人を頼りにすることができるように。」贈与の交換は、ここではやや目標の不明確な取引に換えられ、利子がちらちら顔をのぞかせている。この種の相互性は必ずや選り好みを伴う予測しがたい性質のものとなる。物をやる場合には、誰にやるか細心の注意を払わねばならない。(277ページ)
- このような労働の考えはまぎれもなく新しいものであって、ほんとうに自由なために労働への強制ということを知らないホメロス時代の精神とは隔世の感がある。へシオドスは言葉を尽くして、「仕事はけっして恥ではない、無為こそ恥である」と記している。労働は一歩一歩綿密に計画されねばならない。「仕事を明日に、明後日に延ばしてはならぬ。なぜなら、仕事を怠る者が納屋をいっぱいにするへシオドスの時代ことはないだろうし、仕事を延ばす者とて同じだから。勤勉は仕事をはかどらせる。だが、仕事を延ばす男というものは損失と始終組み討ちをしているものなのだ。」(279ページ)
◇ポリス経済の構成要素
- アテネの場合、ポリス経済は三つのより糸、今日なら全然別物とみなされるはずの三つの要素から成り立っていた。ひとつは領地型の家政における再分配、ひとつは国家レベルでの再分配、さらにひとつは市場要素である。この三つは、政治経済のそれぞれの異なったタイプとみなされるべきものだが、ひとつの有機的全体のなかで共存していたのである。(299ページ)
古代ギリシアの経済活動を題材としてわれわれの経済活動の原初的形態を説き起こしている。また、これは現代のわれわれには両立しえないと思われているものを有機的に接合させたものであったとしている。ヘシオドスの考え方は、きわめて現代に生きるわれわれに近いものがある。