千宗屋『茶味空間。茶で読み解くニッポン』マガジンハウス、2012年7月
- 作者: 千宗屋
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2012/07/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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◇日本の思想:「形」を再生産することにより精神性を受け継ぐ
- 「写し」とは再生産、つまりは複製であり、イミテーションであり、本物に対するニセモノではないかーこれは西洋的価値観の根底にある解釈です。これにたいし日本(とくに近代以前の日本)では、絶対的固有の「モノ」より「形」を重視していました。「モノ」はうつろいやすく、いつかは消滅するかもしれないけれど、「形」は精神性が宿るよりしろであり、形を再生産することで精神性は永遠に受け継がれていくと考えたのです。
- 「小座敷の料理は汁ひとつ、さい二つか三つか、酒もかろくすべし。わび座敷の料理だて不相応なり。」これは利休没後に書かれた秘伝書『南方録』に出てくる言葉です。
茶の空間には無駄なものがない。スッキリしている。モノは必要なときしか出てこず、それだけにその価値を認識することができる。恬淡として気持ちよい。
茶の目指すものは、そうした精神状態であり、一定の「型」はこうした精神の状態が外界に形をとって現れたものである。型は重要だが、こればかりを目的ととらえるとかえって窮屈さを招き、本来の目指すところから逸れてしまう。
目に見えている「茶道」ばかりでなく、目に見えない部分がきちんとしているかが重要なのだと思う。