梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波新書、1969年7月
- 作者: 梅棹忠夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1969/07/21
- メディア: 新書
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○「はじめに」
- 芸ごとのコツは、師匠から教えてもらうのではなく、ぬすむもの、と言われる。芸ごとと学問では事情が違うけれど、まなぶ側の積極的意欲が根本だというところではまったく同じである。ところが、学校というところは「教えすぎる」というところがある。
- この本で私が書こうとしていることは、いかによみ、いかにかき、いかにかんがえるかということである。
- 学校は知識は教えてくれるが、知識の獲得の仕方は教えてくれない。
- 日本の研究者たちは研究能力がおそろしくひくいままである。
- 研究にとどまらずわれわれはさまざまな知的活動を行っている。広くそうした活動にかかわる技術をテーマとしたい。
- 現代は情報にあふれた時代であり、そうした情報をどのように処理できるかという技術が重要である。
- ダヴィンチは、自分の着想や発見を手帳に残した。論理の組み立てについては、文章でなく宙で考えた方がいい場合があるが、さまざまな素材を取り扱うには記録を残すことが必要である。
- 発見は即刻その場で文章にしてしまおう。
- 1ページには1項目のみ、上に表題を付ける。ノート一冊できたときに索引を付ける。これにより知識を整理でき、相互連関も分かる。自分の思想ができるようになる。
- カードを書くのは記憶するため、というわけではない。逆に忘れるために書くのである。
- カードに豆論文を記述する。豆論文には必ず見出しを付ける。
- カードには必ず日付を書く。
- カードはきっちり分類すると死んでしまう。大切なのは作成したカードを繰り返し繰ることである。未整理のカードがいくら増えても問題ない。
- ノートでは、せっかく記載したものが埋もれてしまう。カードは、何年も前の知識や着想を取り出すことができる。
- カードは長続きしない。それは、すぐにカードに書くことが習慣化されないためである。
- 知的生産の技術の要点は、できるだけ障害物を取り除いてなめらかな水路を作ろうというところにある。精神の層流状態を確保する技術といってもよい。努力によって得られるものは精神の安静である。
- 本は一気に読んだ方がいい。少しずつこつこつ読んでもしばしばまるで内容の理解ができていないことがある。本は、著者が全体の構想を立てて書いているのだから、細部より全体が大切である。
- ノートをとりながら読む、ということには賛成できない。読んでいるうちに書き抜いておきたいところに当たったら傍線をふっておき、最後にノートをとる方がよいだろう。
- ノートの内容はなんでもよい。全体の要約、感想や批評でもよい。
- 一回読んでから時間を置いてもう一回読んでみるのもよい。少し冷静な立場で読めるだろう。
- 本に線を引くときは、「だいじなところ」「おもしろいところ」に引く。
- ノートが本を写し取ったものであるならそのノートは必要ない。本をみればよいのだから。読書で大事なのは、著者の思想を正確に理解するとともに、自分の思想を開発し育成することなのである。
- 記憶はあてにならない。どんなに記憶力の優れた人でも、時間とともに色あせ、分解、消滅する。記録はこの記憶の欠陥を補うものである。
- メモ魔になること、これは日常から習慣化することが大切である。
- 私は、仕事の経過、発想、読書記録、会議の議事すべてカードで管理している。日記もカードでよい。
- 日本人には、自分の仕事を記録に残す習慣がない。ヨーロッパでは文書館が発達しており、さまざまな記録が克明に残っている。膨大なカードによる記録は個人のための文書館である。
- りっぱな学者でも原稿がお粗末な人が結構いる。自己流でなく、他人のために書くのだという習慣をつけたい。
- なかなか筆が進まないのは考えがまとまっていないからである。人間の頭の中は、知識やイメージの断片で構成されている。
- KJ法などを活用し、断片を筋道にする技法を学んでほしい。文学作品でなく、ビジネスで使用する文書を作成する技法を学んでほしい。
ブログもたんなる記録としてでなく、後に利用することを考えた場合、検索してどう活用するのかということを考えるべきかもしれない。
最近思うのは、情報をデータベースに蓄積したから利用しやすいというわけではないということ。蓄積する行為は必要だが、自分の頭の中で、これはここという体系が完全にできているから蓄積した情報を利用することが可能なのである。たとえば雑記は紙片に記してからgoogleノートブックへ転記、スケジュールはgoogle calendar、体系付けは手書きの白ノートという形で分類ができていれば探すことに迷わないで済む。
この書でいう「カード」と自分の「googleノートブック」の使い方は大変似ているようだ。後者の「メモ」に
■タイトル(日付)
・内容
という形で記述しているところである。