守山実花『食わず嫌いのためのバレエ入門』光文社新書、2003年9月
- 作者: 守山実花
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/09/17
- メディア: 新書
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○第一章「なぜあなたは食わず嫌いになったのか?」
- 欧米の劇場では大人の男性が楽しんでいるのに対し、日本では女子供の観るものという見方がされている。
- ルイ十四世の庇護の元に発展したバレエには、ルイ十四世当時の豪華、壮大、贅沢が満ちあふれている。こんな饗宴を開催できることは巨大な権力と富の証だった。今でも『眠れる森の美女』にはそんな時代のロイヤルウェディングの情景が出てくる。
- またロマン主義の影響もある。ポワント技法は、非現実的な世界=ロマン主義を髣髴するように宙に浮いたイメージである。
- 「紺や黒の上着に白いシャツ」という過剰な装飾の無いスタイルで美意識の洗練を目指した19世紀のブルジョワ紳士はバレエを観劇した。
- バレエの型が窮屈と思われる人もいるが、バレエは様式美を求めるものである。ルネサンス期に生まれたバレエは古典=ギリシャ・ローマの美術様式、すなわち均整美を目指した。
- グラン・パ・ド・ドゥ、プティパにより生み出された。男女が比較的ゆったりした曲で一体感を高めて踊るアダージョ、男女それぞれがテクニックを駆使して踊るヴァリアシオン、二人一緒になって盛り上がって終わるコーダからなる。
- クラシック・バレエのクラシックとは、作品の形式が古典的だからである。これに対しロマンティック・バレエのロマンティックとは作品の内容に対しつけられたものである。
- 最初に見たバレエ公演が「発表会」という人も多いが、それはプロの公演ではない。それをもって判断しないで欲しい。「バレエ=お稽古事」という意識を捨てて欲しい。
- くるくる回ることに狂喜しているのは変ではないか、という見方、しかし、ブレのない回転は見事なものである。
- バレエ音楽は低俗という見方、踊ることを前提に作曲されており、作曲者も、アラン、プーニ、ドリーヴ、ドリゴなどあまりコンサートでは演奏されない人々が多い。バレエを盛り上げるため、踊りやすさを前提に作曲されている。ダンスと対等になったのは、チャイコフスキー、プロコフィエフ、ストラヴィンスキーなど。また、ジョン・ノイマイヤーという振付家は、バルトークやマーラーを使ったり、モーリス・ベジャールはワーグナーやベートーベン、ローラン・プティは、デューク・エリントンやピンク・フロイドを使っている。
- 海外の大バレエ団でデビューしよう。間違っても上司の娘さんの発表会を選んではいけない。
- ぜひカップルで見に行き、語り合って欲しい。
- どのバレエ団がいいか、どんな作品がいいかは参考書で見て欲しい。初めてならば雰囲気のよい新国立劇場、オーチャードホール、老舗の東京文化会館を勧めたい。
- 席種はできるだけ高いランクの席がよい。1階のセンターブロック10〜20列、もしくは二階の最前列がよい。
- おしゃれに気を使う必要はない。意外におしゃれ度は低い。しかし、悲しい演目には黒を着るなど、おしゃれを楽しんで欲しい。
- ソワレであれば、女性は少し肌を見せても構わないが、髪を結い上げるのはNG。夜会巻きはご法度。靴音にも注意したい。新国立は板張りなので音が響く。
- 会場には10〜20分前には到着しよう。
- バレエは舞台を上から俯瞰するのが見やすい。
- 上演中の作法を5つほど
- 1.むやみに拍手をしない。音楽を中断させたりしないこと。
- 2.音楽が鳴り続けているときの拍手は控える。
- 3.照明が落ちている間は沈黙を。上演中のおしゃべりは小声であっても絶対だめ。
- 4.上演中はプログラムは読めない。客電が落ちているときにガサガサと探しものは迷惑。
- 5.咳対策は万全に。とくに休憩時間は飲み物を取っておきたい。
- 休憩時間、この20分の過ごし方も侮れない。舞台の感想や疑問を述べあうのもいい。ワインやシャンパンなどで口も滑らかになる。ビュッフェは、新国立劇場とオーチャードホールは充実している。東京文化会館はまあまあ、NHKホール、新宿文化センター、ゆうぽうとはまったく期待できない。
- アフター・バレエ、予定があればアンコールは切り上げてさっさと出てしまおう。
- ホールガイド
- 1.新国立劇場:床が木材のため靴音に注意。館内の雰囲気は都内の劇場でもかなりよい。今は新国立劇場バレエ団の公演が中心だが、海外オペラハウスもぜひ使えるようにしたらどうか。
- 2.東京文化会館:おしゃれではないが、堅牢で、ほどほどの品質。アクセスのよさは抜群。
- 3.オーチャードホール:渋谷駅から近いが、人ごみの中を縫うように歩くこととなる。1階は前ブロックが非常に見づらい。2階の前列がお勧め。ビュッフェスペース(ホワイエ)が設けてあり、ワイン、シャンパン、ペリエを楽しめる。
- 4.NHKホール:むやみに広く、ムードもゼロ、アクセスも悪い。ここは避けたい。
- 5.彩の国さいたま芸術劇場:コンテンポラリーをよく行っている。二、三階のサイド席が安い割にはよい。
- このほか、新宿文化センター、厚生年金会館、ゆうぽうと、メルパルクホール、神奈川県民ホール、文京シビックホールがあるが、クロークがない、ロビーが狭い、ビュッフェがお粗末、と非日常感を味わうには残念ながら不適格である。
- 一度は観たいダンサーを紹介したい。
- 1.ニーナ・アナニアシヴィリ(1964〜、グルジア生まれ):ボリショイ、ABTゲストプリンシパル。どんな演目にも対応できる。
- 2.シルヴィ・ギエム(1965〜、フランス生まれ):ロイヤル・バレエ・ゲスト・プリンシパル。ぜひ一度観て欲しい。テクニック、表現力ともにすばらしい。
- 3.ディアナ・ヴィシニョーワ(1976〜、ロシア生まれ):キーロフ・バレエ(マリインスキー劇場)プリンシパル
- 4.マニュエル・ルグリ(1964〜、フランス生まれ):パリ・オペラ座バレエ・エトワール、高貴な踊り手。見事に基本に忠実。
- 5.ウラジミール・マラーホフ(1968〜、ウクライナ生まれ):ベルリン国立歌劇場・芸術監督、ABTプリンシパル
- 6.アダム・クーパー(1971〜、イギリス生まれ):元英国ロイヤルバレエプリンシパル
- 7.ニコラ・ル・リッシュ(1972〜、フランス生まれ):パリ・オペラ座バレエ・エトワール
- 日本で観る半額から三分の一の価格帯である。また、劇場も広く、群舞もたっぷりと観ることができる。
- チケットもバレエ団のホームページからオンラインで予約できる。