中西準子『下水道』朝日新聞社、1983年7月
- 作者: 中西準子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1983/07
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- これまで私は下水処理場を巨大化すると自然環境との調和が破れ、下水道によってむしろ日本の川はなくなってしまうことを説いた。
- 下水道投資額は確実に増加しているが、建設省の目標とする普及水準には遠く及んでいない。この普及水準は、予算を確保するための数値であり実質的な目標とはなりえていない。
- 下水道は市町村固有の仕事であり、市町村ごとに下水処理場がつくられてきたが、市町村合同の巨大な流域下水道が昭和40年からつくられるようになってきた。この流域下水道の建設には、一人分の下水を処理するのに単独公共下水道の倍近い経費がかかっている。
- たしかに「処理場」という観点からは巨大なほど経済的であると考えられる。しかし、流域下水道には市町村を結ぶ太い管渠が必要であり、これに大変なコストがかかってしまう。
- 下水道料金には、たんに処理にかかる経費のみならず、その建設にかかる費用も上乗せされており、料金は値上げラッシュとなっている。
- 流域下水道がない時代には、県は市町村の公共下水道建設に補助を行っていたが、流域下水道が始まるとこの補助をやめ流域下水道事業に投入するようになった。
- 流域下水道については、建設費を使用料に転嫁していない。そんなことをしたら法外な料金になってしまうからである。
- 流域下水道は遊休施設化している部分が大きい。
- 下水道政策の一つの柱が流域下水道に代表される「巨大化」とすると、もう一つの柱は家庭下水と工場排水の「混合処理」である。これにより下水道は悪質な工場排水にとっての格好のたれ流し場所となってしまっている。
- 河川や海に工場排水を流すと、工場は水質汚濁防止法の適用を受けるが、下水道に流すようになると工場は下水道法の適用を受けるようになる。後者は前者よりも水質基準が100倍も1000倍も緩和されることとなってしまう。それは他の排水により薄められてしまうからである。
- 逆に混合処理を推進しようとしているが、企業があまりに高い下水道料金(1日600万円)に音を上げ、独自処理に移行してしまい、増強した処理能力が役に立たなくなった大阪の事例などもある。
- 流域下水道は処理場から上流部に向かって管渠をつくっていくが、いつまでたっても到達しないため、流域下水道から脱退した富山県の福光市などの事例もある。
- 巨大化、混合処理は不経済を生み出している。政策を思い切って変更すべきである。
- 1.工場排水は受け入れない
- 2.流域下水道を取りやめ、単独公共下水道とする
- 3.流域下水道と単独公共下水道の補助率の差をなくす
- 4.大都市の下水道に対する国庫補助率が低く抑えられているが、この差を縮める
- 5.農村下水道は簡単な処理とする
○1「環境アセスメント」
○1「漁民たちの不安」
○1「下水処理水は循環できるか」