メアリー・バフェット、デビッド・クラーク『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』日本経済新聞社、2002年5月

億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術

億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術

■内容【個人的評価:★★★−−】
◎[基礎編]バフェットの銘柄選択
○第一章「市場からの永遠の贈り物ー短期指向と悪材料現象」

  • 投資家の知的レベルがどんなに高くても、こと株式投資になると話は別だ。そこは動物的本能が支配する世界だということを、バフェットは見抜いたのだ。投信マネジャーがどのような信念の持ち主であろうと、最高の短期の値上がり益を追求するのが職を繋ぎ止めるための唯一の方法なのだ。
  • もうひとつ、短期の相場にかける投資家の共通点としてバフェットが気づいたのは、保有株に関して悪材料を耳にすると必ず彼らが売ることだ。
  • 近視眼の市場がいかに株価を低迷させようとも、必ずやそのぬかるみから力強く回復するだけの経済エンジンを備えた、少数の企業があるということだ。こうした力を持つ数少ない企業を探し出すために、バフェットは具体的な基準を編み出した。そして悪材料に見舞われてそれらの企業の株価が下落したとき、バフェットは憑かれたように買いまくったのである。「消費者独占力」の強い企業ーこれがバフェットの求めてやまない企業群である。

○第二章「バフェットが重視する優良企業とは」

  • 上手に買った株は一生手放す必要はない。

○第三章「コモディティ型企業は避けよう」

  • コモディティ型の企業群が提供する製品やサービスには際立った特色がなく、消費者にとっては「値段」が唯一最大の選択基準となるような事業である。
  • コモディティ型の業界では、低コストの企業が勝ち残る。
  • 長期の借り入れは長期の足かせなのだ。
  • コモディティ型の企業を見分けるのはさほど難しくない。
    • ・低い売上高利益率
    • ・低い株主資本利益率ROE
    • ・ブランド価値を築くことが難しい
    • ・多数のライバル会社の存在
    • ・業界全体として相当な過剰生産能力の存在
    • ・利益の不安定性
    • ・収益性が設備稼働率に大きく依存する

○第四章「消費者独占型企業とはーバフェットの富の源」

  • バフェットが興味を示すのは、その事業がファンダメンタルな条件に恵まれ、長期的に健全な繁栄を続ける可能性のある企業である。彼はこれを消費者独占型企業と呼ぶ。
  • 消費者独占型企業が高収益をあげる理由の一つは、大きな資本を要する土地、工場、機械設備などにはそれほど依存しなくてすむことにある、とブルームバーグは考えた。消費者独占型企業は、コカ・コーラの原液調合法や、マールボロ・ブランドといった無形固定資産に依存する面が強いのだ。
  • 製造技術面では概してローテク企業が多いため、高度で複雑な生産設備に投資する必要もない。

○第五章「消費者独占型企業を見分ける8つの基準」

  • 1消費者独占力を持つ製品・サービスがあるか
  • 2一株あたり利益(EPS)が力強い増加基調にあるか
  • 3多額の負債を抱えていないか
  • 株主資本利益率ROE)は十分高いか
  • 5現状を維持するために、内部留保利益の大きな割合を再投資する必-要があるか
  • 内部留保利益を新規事業や自社株買い戻しに自由に使えるか
  • 7インフレを価格に転嫁できるか
  • 内部留保利益の再投資による利益が、株価上昇につながっているか

○第六章「消費者独占型企業の4つのタイプ」

  • 高収益を生む優良ブリッジ型の消費関連事業を、バフェットは次の4つのタイプに分類している。
    • 1長期使用や保存が難しく、ブランド力を持ち、販売業者が扱わざるを得ないような製品を作る事業
    • 2他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるを得ないコミュニケーション関連事業
    • 3企業や個人が日常的に使用せざるを得ないサービスを提供する事業
    • 4宝石・装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力を持っている小売り事業

○第七章「絶好の買場が訪れる4つのケース」

  • 1相場全体の調整や暴落
  • 2全般的な景気後退
  • 3個別企業の特殊要因
  • 4企業の構造変化

◎[応用編]バフェットの方程式
○第八章「なぜ安値で買うことが大切なのか」

  • 買値に関するバフェットの姿勢は単純明快である。それは可能な限り安値で買うことにつきる。

○第九章「利益は安定して成長しているか」

○第十章「買値こそ投資収益率の鍵を握る」

○第十一章「利益成長率から見た企業の実力」

○第十二章「国債利回り以下では投資と呼べない」

○第十三章「バフェットが高ROE企業を好む理由」

○第十四章「期待収益率の水準で投資を判断する」

○第十五章「コカ・コーラ株の期待収益率と実績」

○第十六章「疑似債券として見たときの株式」

○第十七章「利益成長率から期待成長率を求める」

○第十八章「自社株買い戻しが株主の富を増やす仕組み」

○第十九章「本業による利益成長か財務操作か」

○第二十章「経営陣の投資能力評価」

  • 内部留保の有効活用でチェックすることができる。

○第二十一章「インターネット時代のアービトラージ戦略」

  • アービトラージ戦略とは、企業の合併や部門売却、敵対的買収など、特殊な条件下で発生する、短期的な株価の歪みから利益を得ようとする戦略である。

○第二十二章「バフェット流投資のためのワークシート」

○第二十三章「3つのケーススタディ

■読後感
たしかに、この2011年時点で、ハイテク産業は斜陽産業に近い印象である。経済成長は労働力と資本と技術の掛け算で決まり、とりわけ技術は価値を産み出す源泉であるはずだが、現実は異なる。どれだけ効率的な生産を行ったとしても価格競争になってしまうと利益は産み出せない。
ブランドによる差異化や市場の独占が大きな鍵を握るようになっている。
ただし、バフェットの時代は右肩上がりのインフレ経済が基調だった。今も「持ち続ける」戦略が有効といえるのかどうか。