村上龍(2011)『無趣味のすすめ』幻冬舎文庫

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)

■内容【個人的評価:★★★−−】

◇「書く」ことに満足しない

  • 執筆が日常的行為と化すこと、書くことそのものに満足すること、いずれも予定調和に向かう要因となる。わたしにとっては忌避すべきことだ。(15ページ)

■コメント「書くことに満足すること、まさにこのようなブログや日記などはその最たるものだろう。書いている割にはあまり身にならない。村上さんは自らの問題意識とそれを解決する手段として執筆という方法をとっている。」


◇依存は人間関係を破たんに向かわせる

■コメント「「依存」し、せざるを得ない関係だからこそ生じている社会的現象である。最近は男性も被害者である実態が報道されている。支配・被支配の関係が、たんに経済的な部分での優劣に関わらず、複数の人間が同居している場合、関係性として形作られやすいという特性に基づくものと考えられる。」


◇読書を自己目的化せず、「どんな情報が必要か」を考える

  • ピジネスシーンに限らず、学生でも小説家でも、どんな職業の人でも、読書をするかしないかが問題ではなく、どんな情報を自分は必要としているのかを自分で把握できるかどうかが問題である。(48ページ)

■コメント「今困っている状況を解決する手段として、必ず参考となる情報がある。戦略なく情報を集めるのと、自分に本当に必要な情報を認識しているかは出発点からして大きな違いがある。必ず問題意識とテーマをもって情報に接すること。」


◇飾りだけの言葉は組織をダメにする

  • ダメなリーダーに共通する特徴がある。訓辞や演説や会見において主語と述語がはっきりせず修飾語を多用するのもその一つで、最近だと、「命がけで」「しっかりと」「きちんと」「粛々と」などが流行っているようだ。(55ページ)

■コメント「修飾語に満ちた演説はもっともありがちな演説でもある。修飾語は非常に便利であり、使いやすい反面、結果として何をももたらさない危険性を有している。同床異夢を生じやすい。これは修飾語を凝らした文章についても同じ。」


◇トラブルは謝るのではなく、まず原因究明する

  • ビジネス上のトラブルが発生した場合、または何らかの疑いが生じたときは、ことの経緯と自分がどう関与したかを明らかにするのが先決だ。単に謝ればいいわけではない。(57ページ)

■コメント「きちんと事実に向き合い、分析することがすべてのトラブル対処の出発点であるべき。謝罪するのはそれを踏まえて最後に行われるべきこと。」


◇部下は「育てる」のではなく、ともに仕事をすることで「育つ」

  • どうやって部下を一人前に育てるか、そんなことを真剣に悩んでいる上司がいることも信じられない。やるべき価値のある仕事を共にやっていれば何か特別なことをしなくても、つまりことさらに何かを教えなくても、人間は自然に成長する。(79ページ)

■コメント「これはどんな上司も悩むのではないだろうか。村上氏の言うことは上杉鷹山の語録のようにも感じられるが、まさにこれが実現できるかどうかが一番大切なのは言うまでもない。教えるのではなく、仕事を通じて成長すること。」


◇意思決定者は孤独な存在

  • 責任とセットになった決定権を持つ人は、基本的に孤独な存在であり、事前に正確な情報や客観的な意見を必要とするが、決定は一人で下さなければならない。決定に至るまではどこまでも謙虚になり、決定する瞬間「天上天下唯我独尊」となる、それが成功者の普遍的な態度である。(121ページ)

■コメント「決定権のある者にとって必要なのは決定すること。しかし、状況によっては決定することによりかえって望ましくない状態に陥ることもある。そうしたことも含めて、よくよく知り、そして決断することが必要。」