伊藤明夫『細胞のはたらきがわかる本』岩波ジュニア新書、2007年9月

細胞のはたらきがわかる本 (岩波ジュニア新書)

細胞のはたらきがわかる本 (岩波ジュニア新書)

■内容【個人的評価:★★★★−】

  • 生命の定義は、
    • 1.外界との区別する境界をもっていること
    • 2.自分と同じものをつくり増やすことができること
    • 3.外界から物質を取り入れて自分の体をつくり、自分が活動するエネルギーをつくって自分を維持することができること
  • である。こうした性質を備え、細菌・酵母のような微生物、植物、動物などすべての生き物に共通なものとして「細胞」がある。
  • われわれはたくさんの細胞からつくられているばかりでなく、これら細胞の一つ一つが連携しあっている。これは、個人と組織からなる社会と似ている。

○一章「細胞は小さないのち」

  • 私たちの身体は小さな細胞がおよそ60兆個集まってつくられている。
  • ほとんどの細胞は微小で肉眼で見ることはできないが、見ることのできる細胞としてニワトリの卵がある。卵黄は一つの細胞である。
  • 人としての個体は死んでも細胞がすべて死ぬわけではなく、分裂して増え続ける細胞もある。

○二章「細胞は生まれる」

  • 受精の際は、840万種類の精子の一つと、同じく840万種類の卵子の一つが出会って結合する。つまり約70兆の組み合わせの一つということになる。

○三章「細胞は増える」

  • 細胞の分裂は無限にできるわけではない。胎児の細胞でほぼ50回弱、成人の細胞で20回程度が限界である。分裂するごとにDNAの長さは短くなり、50回で限界を迎えるのである。
  • がん細胞の大きな特徴はその旺盛な増殖能力である。正常な細胞のような身体の一部としての機能を果たさず、栄養分を奪い、身体を衰弱に追い込む。
  • ふつうは遺伝子に多少の損傷が起きても、DNA修復酵素により修復されるので、すぐにがんになることはない。しかし、大量に損傷がおこったり修復酵素に損傷が生じるとがんが発生することになる。

○四章「細胞は死ぬ」

  • 百年前と比べると、平均寿命は40歳も違うが、70歳老人の平均余命は男性で8.0年から14.3年、女性で8.8年から18.7年と、極端に伸びているわけではない。
  • 動物では生殖可能年齢がおおよそ決まっており、この活動が終わると急速に活力を失い、死んでしまう。
  • 脳の神経細胞は、誕生したときから増えることはなく、20歳を過ぎると一日に10万個以上死滅してしまう。心臓からの血液量も加齢とともに減少する。病気にかからず事故にもあわなければ、120歳が寿命となる。
  • 酸素がなければ細胞は生きられないが、酸素はからだに害を与える毒でもある。活性酸素は攻撃的で毒性が強く、老化現象の真犯人ではないかと考えられている。具体的には、DNA鎖を切断したり、塩基の変化、脱落を起こしたりして異常なたんぱく質をつくり出してしまう。呼吸こそが老化と死を引き起こす。逆に、酸素の利用が少ないと老化は抑えられる。腹八分目などは有効というデータもある。

○五章「細胞はからだをつくる」

  • 外界と接する細胞はすべて短命である。皮膚、髪の毛などがそれにあたる。

○六章「細胞は連携する」

  • 細胞と細胞の間は、細い筒状の管で結ばれている。(ギャップ結合)

○七章「細胞の中をのぞいてみると」

  • 細胞内では、たんぱく質が活動を行っている。内政としては、物質合成とエネルギー生産を行い、外交としては、外界との物質・情報の交換を行っている。
  • 細胞内小器官は、核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、リソソーム、ペルオキシソーム、リボソームからなる。

○八章「細胞内社会の働き」

  • 細胞はたんぱく質でできている。たんぱく質は、以下のはたらきをしている。
    • 1.酵素:食べ物の消化、エネルギー生成、子孫をつくる
    • 2.駆動力:エネルギーを利用してさまざまなものを移動させる
    • 3.情報伝達:たんぱく質ホルモンは、血液に乗って全身を回り、標的細胞に情報を与える
    • 4.身体のかたちをつくる:細胞や臓器、からだ全体など