モートン.D.デービス『ゲームの理論入門』講談社ブルーバックス、1973年9月

■内容【個人的評価:★★★−−】

  • ゲームの理論は、当初経済問題に対する新しいアプローチのために創造されたものである。ジョン・フォン・ノイマン及びオスカー・モルゲンシュテルンは、経済行動の典型的な問題は、適切な戦略ゲームの数学的概念と厳密に一致していると考えた。
  • どんなゲームについても二つの基本的な質問が回答されねばならない。すなわち、
    • 1.プレーヤーはどう行動すべきか?
    • 2.ゲームの最終結果はどうあるべきか? である。
  • プレーヤーの人数が少ないほどゲームは単純なものとなり、複雑なゲームほど理論の満足度は下がっていく。

○第一章「一人ゲーム」

  • 大切な点は、とるべき行動について云々する前に、プレーヤーの目標を定めることである。

○第二章「完全情報・有限・二人・ゼロ和ゲーム」

  • ありふれた室内ゲームやチェスが該当する。ブリッジやポーカーは該当しない。属性は以下の通り。
    • 1.プレーヤーは二人
    • 2.彼らはゲームの結果に関して相反する利害を有する
    • 3.ゲームは有限である
    • 4.不意打ちはない

○第三章「一般・有限・二人・ゼロ和ゲーム」

  • ゲームをしながら学んでいった場合、双方の戦略はミニマックス戦略となる。ミニマックス戦略は本来防衛的なものであって、往々にして、もっとうまくやれる機会を逸してしまう。

○第四章「効用理論」

  • 競馬の研究では、人々は経験が増えるほど穴馬に賭けたがる傾向にある。
  • 人々は平均利得のみに関心を持つわけではない。
  • ある人が、人生とは幸運と不運が互いに相殺しあう一連のギャンブルだと考えるなら、ドルの平均収益を最大化しようとするかもしれないし、それは結構なことだ。しかし、より危険の少ない選択対象を選好するなら、たとえ期待収益が低下するとしてもそれは結構なことなのだ。効用理論はどちらの態度にも適合する。

○第五章「二人・非ゼロ和ゲーム」

  • ミニマックス戦略は、相手が合理的に行動するという仮定に基づいている。合理的とは、自分の私利私欲に基づいて行動するということである。もし、相手が合理的に行動し損なうと、ミニマックス戦略もこの過失を利用できずに終わってしまう。
  • あきらめて協定を結ぼうとすれば、弱みと勘違いされて、かえって相手をつけあがらせる。
  • 比較的大金がかかっているときは、人々は安全にプレーする傾向にある。たとえば、1000万ドルを五分五分で得られる機会より、確実に100万ドルを得られる機会を選ぶ。
  • パレート最適とは、双方のプレーヤーが同時によくなる協定のもたらす結果である。
  • 囚人のジレンマに参加する人々は協力し損なうことが多い。ラパポート教授は、人々がゼロ和ゲームにおいて洞察力の不足からミニマックスをプレーし損なうと示唆している。

○第六章「n人ゲーム」

  • ゲームの理論は、主体が採択する戦略を数学的に厳密に定義し、これにより競争関係を明示的にゲームにモデル化して、主体の行動法則を追求する行動科学の一領域である。経済・社会を構成する主体が、ある行動を採ったときの将来起こりうべき結果は、不確実であると同時に多かれ少なかれ競争相手の戦略にも影響される。このようなより現実的な局面は、レッセ・フェールの思想を基調とした個人主義的な社会観を堅固に持つ伝統的な経済学ではよく接近しえず、対立・協力・信頼・不信といった、自己と他者の関係を規定する諸要因を明確に含意する行動の科学は、1928年にジョン・フォン・ノイマンの創始になるゲーム理論によって著しく前進した。フォン・ノイマンオスカー・モルゲンシュテルンが1944年に著した『ゲームの理論と経済行動』以来、多数の数学者や社会科学者によりゲーム理論は著しい進歩を遂げた。